学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
前部長のつぶやき

世界脳神経外科学会 事務局長(Secretary of WFNS)に就任して

先日中国北京で開催されたWFNS Interim meetingの会議で、日本の脳神経外科学会の代表としてWFNSのSecretaryに選任されました。この学術機構については本機構のAssistant secretaryに専任されたWFNS2017を紹介した2017年9月の記事に記載しています。以前は寺本先生が本学会のセカンドバイスプレジデント(AASNS代表)を勤められていた学会です。世界各国の脳神経外科学術団体の集合体みたいなもので、主な役割としては世界の脳神経外科の進歩と均てん化に寄与することです。特にアフリカや東南アジアなど脳神経外科医が少なく、機器が不十分な地域の教育的、金銭的、また技術的支援です。以前アフリカの事情をお話したように、実際にはそのような国では、まず国内情勢の安定が第一、次に社会的インフラ、公衆衛生の拡充が喫緊の課題です。脳腫瘍や脳動脈瘤で死ぬ人よりもはるかに数百倍~数千倍の規模で感染症や事故・戦争、災害などで亡くなる方が多いのです。平均寿命は40歳なんていう国もあります。「そのような中で脳神経外科を、と言っても、、、」と思われるかもしれませんが、世界はものすごいスピードで進歩しており、今はアフリカでは日本よりもスマホの普及、キャッシュレス支払いが増えているというのはご存知かと思います。日本の国の中に閉じこもって、自分の生活だけが安定していれば良い、自国の中だけ豊かであれば良いという考えで物事がすむ世界ではなくなってきていると思います。そのような社会や人間の世界は多分10年20年は持たず、あっという間に自分の立場を無くすという事態になってしまうように思います。脳神経外科然りで、前回中国の脳神経外科事情を書いたように、アフリカや東南アジア、南アメリカなど、ものすごいスピードで進歩を遂げてきています。確かに手術のビデオなんかを見ると、なんでこれで術後こんな元気?と思うような発表もありますし、一般にビデオが汚い、、のは仕方ありません。日本のようなお上品な手術は、今の日本のなんでも揃う環境であるからこそ成り立つものなのかもしれません。ただ以前触れた名古屋藤田の加藤先生の指導のもとで、日本の中堅―上級クラスの谷川、滝澤、栗田、菊田、、、などという先生たちは、様々な国でその技術を披露する出張手術をしています。その場で写真を見て麻酔のかかっている患者さんを治療するので、なかなか医療として倫理的にどうなのか?ということはありますが、彼らは日本で鍛えた力を持って、ガツガツ頑張ってやって、認められてきているようです。Poorな環境で人種の違う人たちの手術をするというのは、日本の手術風景に新しい風を起こすかもしれません。ぜひ教室の先生たちも力をつけて、海外でも出張手術を経験できるようになってほしいと思います。

話しが少し逸れましたが、世界の中で、日本の脳外科に必要なのは、1)まず各国の医療、外科、そして脳神経外科の状況を把握すること。2)その中で、WFNSや日本の脳外科が何ができるのか?を把握すること。3)さらに日本の洗練された技術がどう生かせるのか?を考えることかもしれません。その中でACTすること。我々としては、まずはどんなところに行っても困難な、見たこともない病気を的確に診断し、把握し、治療方法を考えられる、手術をできること。またそのような地域の人を教育して、我々の知識や技術を広めること。もっと大きな視野では、世界の情勢をよく知って、本当の意味での我々の役割を知りつつ判断が可能となること。と思います。目の前のことだけではなく、実際に目の前の人たちが何に苦しんでいるのかを考えることも重要と思います。多分それは、日本の中の日頃の診療の中でも、先生たちの未来のために役に立つ力になると思います。

WFNSの環境は、いつもそのようなものが目の前にあります。様々な人が、色々なことを言ってきます。今後も色々な情報を教室の先生たちとShareできると良いと思います。

Secretaryの役割は学会の事務運営、会議の連絡、世界の各学会間の連絡調整です。なかなか英語と、口ばかり達者?かと思われる人たちとやりあうのが大変ですが、真摯に向き合って、日本人らしく、実直に仕事をこなしてみたいと思います。その上で、先生たちと共に何か世界に貢献できれば良いと思います。

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