学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
前部長のつぶやき

学会発表のエチケット: JNEF2019に参加して

太組一朗先生にお招きされて彼が会長として主催されたJNEF2019に参加してきた。これは脳神経外科同時通訳団の研修会でもあり、全て発表は英語、質疑応答も英語、同時に訓練でその英語発表の日本語通訳もつくとい仕組みである。2日目は参加していないが、様々な同時通訳の訓練がされるらしい。

さてその会では英語の発表の仕方、発音もそうだが、それ以上に学会発表の心構えと様々なトリックがコメントして厳しく指摘される。症例報告が多く、午前午後で28件の発表と教育講演3、ランチョン1がある。私は最初の教育講演を聞き逃してしまったが、一般講演も日本全国の地方会のようで非常にバラエティーに富んでおり為になる。一方でコメントは非常に「辛辣!(愛のこもった と表現はされれいるが、最初はとてもそうは思えない)」であり、ぐさっと発表者だけではなく、聞いている人間にも強く突き刺さるものである。心が痛くなって、私もちょっと中座して散歩したり、腕立て伏せをして戻らないといけなかったくらいである。

そのコメント中心は、皆様もご存知 元浜松医大の教授の植村研一先生(御年 86歳とのこと、非常に元気かつシャープ)と今回は聖マリアンナ大学で英語教育に関わり政府の通訳(ヒラリーさんやオバマさんの通訳などをしたり、皇室のコメント英訳したり)をしている田嶋ティナ特任教授であった。

早朝に植村先生の教育講演があったらしいが聞き逃している。極めて残念である。一方で田嶋先生の教育講演「プレゼンテーションの極意」は聞くことができた。女子医大の平先生も教育講演IIを午後にされて、「国際的学術活動の中で生き抜くための秘訣」という発表をされた。これも非常に力のこもったものであった。

ちなみに去る7月2日に当教室の合同カンファランス1000回記念会を開催させていただいたが、その際にお招きした伊達先生は本会の団長をされており、学会発表について同様のコメントを含めた発表もされている。

自分の為にメモに残したことであるが、彼・彼女らのコメントは非常にみなさんの為になると思うので、自分へのまとめも兼ねてここに紹介したい。

学会発表の態度:

エチケットを大事に:発表は自分のやってきた研究や経験を教えてやる・見せてやるのではなく、聞いて(聴いて)もらう・見て(観て)もらうのである。したがって発表のエチケットは大事にしないといけない。

例えば最後の謝辞に”Thanks for listening”はない。通常は目上の座長などに感謝するのだから”Thank you for your attention and listening.”とかである。

田嶋先生は学会発表は聴衆へのプレゼントである。プレゼントをするつもりで話しなさいと言われていた。発表はスライドに集中せず、自分に集中しなさいとも言われた。要はスライドを観てもらうよりも自分を見て、聴いてもらうことが重要と言うことである。

そのためには、自分もスライドを見ているばかりではなく、目を聴衆に向ける。壁には向けない。聴衆の目の10-15cmくらい上を見ると良いそうである。

一会場に一つのプロジェクターであれば、レーザーポインターで強調部分を示すのは良いが、2面、3面ある会場で話す時には、必ずPCのパワーポイント等の強調ツールを用いないと、ポインターで示されていないスライドを見ている人は何を強調されているのかわからない。

声と調子:発表は学会場の末席にいる人にもはっきりを聞こえないといけない。もぞもぞ、小声、早口、一本調子な発表は、聴衆をいっぺんに睡魔に襲わせる。

声はできるだけ「大きく」。特に大事なところはゆっくりはっきりと喋る。大事なところはSlow downする。強調したいところはしっかりと感情を込めて話す。デパートのアナウンス式の単調な発表は何も伝わらない。心地よい眠りに誘う。

ゆっくり話ができないほどの内容がある場合、聴いてもわからない発表をするよりは、すべてを話すよりは一部にした方が良い。(自分に言っています) 早口は特にひどい英語ではわかってもらえない。

特に原稿読み上げ、スライド読み上げ発表は全く何も伝えられない。100回発表練習をして何も読まないで発表できるようにすること。スライドに読み上げ原稿が書いてあるのも最悪!そんなスライドは誰も見ない。

私自身も若い頃、広島の地方の学会で、読み上げ原稿を準備して発表したことがあったが、会場の手元が暗くてその原稿を読めず、間違ってページを飛ばして読んだりなどもあり、せせら笑いが会場から聞こえてきて、本当に自分の一生記憶に残る大恥を書いた。今でもその時の背中の冷え冷え感は忘れられない。

繰り返しになるが、学会発表は聴衆へのプレゼントである。私は気分としては、カラオケで一曲披露するようなものだと思っているので、自分のベストを尽くせるように発表の準備をしておく。

マイクは手に持つ:「声」を伝わらせる為にすべきことは、もし手に持てるマイクであればマイクを左手に持つことである。これをまず最初に指摘されている人が多い。マイクに向かって前かがみの姿勢も変だし、固定されたマイクだと発表中に顔を自由に動かせない。この時右手はマウスのコントロールに用いる。

これは田嶋先生は逆で、田嶋先生は発表は演題では行わず、飛び道具を使うので、そちらを左、マイクは右でもつという。自分なりの発表の仕方があって良い。(とのこと)

2.英語について

英語の発音と文法:植村先生のコメントで最も多かったのは、文法とアクセントである。Theを入れるか入れないか。現在形か過去形か?例えば結語が過去形であれば、それは今回の発表のみの事実である。現在形であれば、発見された事実は、科学的事実として一般に通用することであることを示す。

英語の発音と文法は誰でも直せるものなので、最低のエチケットだと言われます。

アクセントは日本人の最も不得意とするところであるが、植村先生はわからなかったら必ず辞書を引きなさいと言います。インターネットの辞書も活用されているようである。Weblioとか英辞郎とかクリックで発音もしてくれる。何度もいうが植村先生は86(7?)歳である。みなさんalbuminはどう発音しますか?私は米国でこれを何度言っても通じませんでした。Weblioでも引いてみてください 「ミン」です。ほぼ最初のアルは極小の「アル」である。

また症例発表の英語表現中で、特にみなさんが誤りやすいのは

The case is a 81-year-old man presented dizziness,…などである。Caseは患者そのもののことではなく、症例の経緯のことである。ですので、発表は The patient is a 81-year-old man who

presented with dizzinessとなる。またはThe case is about a patient who presented withとなる。

略語:論文でも発表でも略語を多用する人が多いが、略語は一般的に使われているもの以外はできるだけ使わない。また使うにしても、学会発表では例えばMCAというので、middle cerebral arteryというのとどちらが言うのに長く時間がかかるか?聴きやすいか?試してみてください。また耳慣れない略語は論文では見返せるが、学会発表では何のことだったわからないので、スライドに略語で記載しても発表の時はfull spellingをするのが良い。また自分で勝手に作った略語などは決して使わない。略語創作人となるのは避けましょう。

Of: 植村先生がしきりと言われたのは、日本人の英語にはofが多い。Ofはいらない英語の代表格で汚い英語。例えばwe performed the removal of his brain tumorとかはwe removed his brain tumorで良い。動詞を名詞化したものはできるだけ動詞に戻すのがコツのようである。

  1. 発表スライドについて

これは私のブログでもまた当科の決まりでも繰り返し言われていることであるし、今回植村先生、そして田嶋先生の発表はこのことが中心であった。ぜひ学会発表スライドを改善してください。

タイトル: 今回のJNEFの演題募集の要項に詳しくあるが、日本人の学会発表演題はindicativeなタイトルが多い。これは私も多いので、反省しきりであった。例えば「未破裂脳動脈瘤の自然歴に影響する因子についての研究」はIndicativeなタイトルである。それに対してInformativeなタイトルをつけると発表内容がよくわかり、興味がわく。「脳動脈瘤の形状は破裂リスクに関与する」などがInformativeなタイトルとなる。日本人の投稿論文も学会の演題投稿もほとんどタイトルがindicativeなものであり、欧米の編集者はそれもみただけでゴミ箱に放り込むらしい。したがって日本人の投稿(論文も学会演題投稿も)の70%以上は見ることもなくゴミ箱に捨てられているらしい。。。「できるだけ発表の内容のわかるタイトルにすること。」が重要である。(添付画像JNEFのホームページの但し書きを読んてみてください)

またタイトルスライドに大学のロゴを入れるのは良いが、全てのスライドに入れる必要はない。聴衆は大学のロゴを見に来たのではない。学会に情報を得に来ているのである。

スペル: スペルチェックは必ず行う。例えば演者の名前など、今回松井先生の名前をMatuiと書いていたのを指摘されていた。「マチュイ」さんですか?と。

スライドは簡潔に:スライドに文章、センテンスを書く人がいるが、これは論外!

7行―7文字/1行ルールを守る。それ以上になるなら2枚にする。

1行に一つのコンセプトのみを書く。

大きな文字でシンプルに、コンサイスにスライドを作る。箇条書きにする。その間は発表で埋める。

時に外国人でセンテンスで発表を作ってくる人たちがいるが、これは日本人が英語を理解しないので、わかりやすいように作り直して来ているそうである。

非常に込み入った、説明を要するような内容をスライドにしない。

Busyなスライドを作らない。

色を使いすぎない。どれが強調しているのかわからなくなる。

フォント:はスライド内、発表内で統一すること。

英語ではSans-serifのものArielとかTahoma、Helveticaなどを用いる。

日本語では明朝体よりもメイリオ、ゴシック、Osakaなどを用いる。

Italicは読みにくい。

大文字だけの文章は非常に読みにくく、大文字記載は単語を強調するためだけに用いる。

下線はHyper-linkをするところだけに用いる。

フォントの大きさは、本文中は28-36ptが最適とのことである。

スライド・文字の色や枠:枠や変な模様のあるスライドはせっかくのスライド範囲を小さくしてしまうので、よほど気にいいったもの以外は用いない。

スライドのバックは暗い色で文字が明るい色のスライド Light on Darkが良いと言われれる。ただこれは色々異論もあり、暗い学会場では白いスライドの方が読みやすいとも言われる。目が老化している人にはその方が良いのか?と言う意見。色盲の人にはLight on Darkの方が読みやすいと言う意見もあった。

私は主に(老眼でもあるので)、白基調で黒文字、強調は青で行なっている。

黒や紺のバックの場合は文字は白、強調は黄色後良いとされる。それ以外の中間色の好きnな人もいるが、その場合は文字は補色を用いると良いとされます。
 

スライドの内容:繰り返しのとなるが、7行・7語原則を守る。

大きな込みいった表を貼り付けることや、論文の表を貼り付けることがよくあるが、まず内容を見れる状況ではないので、付け加えて強調したいところを拡大したものを出す。またはそこだけを出す。I know you cannot see this,,,などとコメントを言わないといけないスライドを出すのであれば出すな!と言うことです。

自分の症例のまとめを細かい表にする、症例のまとめを細かい表にして示すことがあるが、それは形だけは出しても良いが、まとめた強調項目のわかりやすいスライドも追加することが重要である。データを羅列したスライドは避ける方が良い。

本当に必要な情報しか含めない。

説明を記述で書いたスライドは作らない。

スライドのレイアウト:読める。読みやすいスライドを作る。

文章を書くよりは箇条書きにする。間は発表で補完する。

アラインメントは左側に揃える。右ではない!

Alinement, Indentation, Line spacingに注意する。

図はできれば1スライドに2つまでに制限する。いくつもあっても見ることができない。

略語については説明したが、できるだけ略語は避ける。説明があっても覚えていられない。

つまらない発表とは:

静かな声で話す

スライドを読み上げる

単調な喋り方

スライドが文字ばかりでくどくどしている

話し方がつまらない

強調などのタイミング、slow downなどのタイミングが悪い

それを避けるためには

熱意を持って話すこと。自分が発表したくない発表を誰も聞きたがらない。

自分なりの発表スタイルを作り上げる。

そのために自分の発表を録画、録音などして聞いてみる。練習すること。

Key to Successful Presentation:

Brief

Simple

Clear

Relevant

Fun

「えーと」と「And」:

これは最後に同通の通訳に対して岡山の伊達先生から出てきたコメントであるが、同通の人が(発表者でも多いが)、「えーと」とか[And]を口癖としていってしまう人が多い。自分もその口であるが、発表や話の際の「えーと」は絶対に避けるべきである。以前NTTで院長をされていた落合先生 「えーとは飲み込め」と言われたのを今でも覚えている。

学会発表や論文発表は自分のやってきたことを皆さんに知ってもらうチャンスをもらっているものです。エチケットを守って、しっかり努力して、失礼のない発表をするようにしましょう。

植村先生は近々に以前出版された「うまい英語で医学論文を書くコツ」と言う本の改訂版を出版されるそうです。

こちらの改定版です。https://www.amazon.co.jp/%E3%81%86%E3%81%BE%E3%81%84%E8%8B%B1%E8%AA%9E%E3%81%A7%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E8%AB%96%E6%96%87%E3%82%92%E6%9B%B8%E3%81%8F%E3%82%B3%E3%83%84-%E6%A4%8D%E6%9D%91-%E7%A0%94%E4%B8%80/dp/4260136305

2019年7月2日 日本医科大学脳神経外科合同カンファランス1000回記念を開催しました。塩川(Stroke2020会長)、伊達(JNS2020会長)両教授、ルーマニアからの留学生Maria Golebiowskaさんに講演をお願いしました。塩川先生は「脳卒中から入った脳神経外科医のこだわり」ご自身のトレーニング、興味、脳卒中医として外科医のあり方について語られました。伊達先生は「医学生・研修医に手術への興味を持たせるには?手に英語論文を書かせるには?」という発表をしてくださいました。非常にためになる御発表でした。

伊達先生の何台ものモニターに囲まれて仕事をしている場面の動画の紹介には驚きました。

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