学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
前部長のつぶやき

ベルギーという国とEANS

先日ベルギーのブリュッセルでヨーロッパ脳神経外科学会(EANS)があった。アジアオーストラリア脳神経外科連合(AASNS)がinvited societyということでスタッフとして参加させてもらった。実はこの学会は昨年のヴェネチアーリド島の学会に続き2度目の参加である。世界の学会というと、世界脳神経外科コングレスとアメリカ脳神経外科学会、アメリカ脳神経外科コングレスが有名であるが、このEANSもその一部となろうと必死の活動である。組織もどんどん大きくし、多くの学会を招聘して世界を視野に学会運営をしている。米国のコングレスやAANSと唯一違うのは学会開催がヨーロッパの様々な歴史のある都市であり、来年などはあのアイルランドのダブリンである。ぜひ行ってみたいと思える街である。内容も5日間にわたる長丁場であり、様々なハンズオンコースは別立て、若手のための研究学会なども別立てで組織している。内容もプレナリーと血管障害、腫瘍、機能、脊髄、小児、そのほか社会などのセッションもある。しっかりと別れていて、プレナリーは全員が聞くべき内容、それぞれのセッションは専門色が豊かで、自分の予定を立てやすい。色々な言語がヨーロッパにはあるが、英語が用いられる。なかなか世界学会としては日本の総会と近い時期に開催されるので行きにくい面もあるが、参加してみる価値のある学会である。実は日本人の参加者はAANSよりも多くなってきているのではないかと思うくらいである。AANSやCNSはご存知のように開催地がサンフランシスコ、サンディエゴ、ニューオリーンズ、シカゴ、ワシントン、ボストンなどハブ空港がある地域に限定されつつあり、ひとまわりするとちょっと開催地そのものにはあまり興味は湧かなくなる。世界脳外科学会も前回はイスタンブールであったが、次は中間(2019)が北京(タクシーは英語通じません!)、その後(2021)はコロンビアのボゴタとか、ちょっと安全面でどうかなという街(国)での開催なので気がひける状況でもある。

さてベルギーという国はみなさんどのような印象でしょうか?ベネルクスの一部、EUの中心、サッカーで日本が惜敗した国という感じでしょうか?有名なのはチョコレートとビール ワッフルの美味しい国と言った感じ。

実際には九州より小さく、人口は1100万人で東京都より少ない、また19世紀にオランダから独立した立憲君主国なのです。また国内はなかなか不安定で、ここはゲルマンとラテンの中間、プロテスタントとカトリックの中間、オランダ語圏とフランス語圏の中間なので、以前から北部のフランデレン地方(いわゆるフランダース)と南部のワロン地方に別れていてそれぞれの独立分裂の機運がいつもあるのです。オランダには歴史上も近いのですが、実際にはオランダから戦争して独立したのです。ですので、宗教はオランダのプロテスタントではなくカトリックで、それがゆえに食事は格段に美味しいです。言語は北部はオランダ語が中心で、南部はフランス語、一部はドイツ語が公用語だそうです。英語は北部やブリュッセルは通じますが、南部はほぼフランス語しか通じません。歴史上フランスとドイツ、またオーストリアに挟まれ、戦争ではいつも通り道で、有名なワーテルロー(ナポレオンがエルバ島から脱出して再度ヨーロッパを席巻するために戦い破れた地、レミゼラブルにも出てくる)もブリュッセルのごく近郊である。ナチスには第3代国王が国民を守るために協力し、戦後かなり立場を悪くしている。中学の地図や歴史で興味があったのは唯一コンゴという国がベルギーの植民地だったことであった。なんでだろうと思っていたら、コンゴは第二代国王の私有地だったそうである。あの広大な土地を私有地で持っていたというのは驚きである。ダイアモンドやウランが多量に算出するので、そのウランがマンハッタン計画に用いられた(広島、長崎の原爆)そうである。その他はあまり知らなかったのであるが、その後の植民地政策の過ちで、コンゴはひどい内戦となり、第一次世界大戦でドイツから勝ち取ったルワンダでは、その地域を政治的に都合よく収めるために人工的に作った人民分類(人種は一緒だが階層を変えた)フツ族とツチ族があり、そのひどい虐殺仕合の歴史が戦後繰り返された。今はルワンダはアフリカでもっとも安全な地域とされているが、つい先日コンゴでのエボラ熱がルワンダにも拡散しつつあるという。なかなか不安な土地である。

さてベルギーについてであるが、ブリュッセルは北部に位置する独立都市である。グランプラスという非常にきれいな中心広場があり、新しい街と中世風の建物が混在している。食事は極めて美味しい。ビールも何百種類とあり、いろいろな風味である。自然発酵のランビックビールというのを試して見た。ラベルは小便小僧の柄で(もちろんそういうラベルではないものもある)、味はほぼ鮒寿司かへしこを液体にした感じであった。ラベルと相待って何か微妙である。そのどちらも食べたことない人はぜひ食して見てください。好きな人は好きです。南の方はというと、これはとてつもない美しい丘陵地帯であり(以前お話ししたイタリアの丘陵に近い)、ポツンポツンと美しい村や川沿いの城塞都市などが点在している。南部ワロン地方の美しい24の村というリストがあるくらいで日本語で書籍もある。1村、1日で十分雰囲気は味わえるので、もしベルギーに行くことがあったら訪れてみることをお勧めする。食事はまた、ブリュッセルとは格段の差のあるフランス系の食事でジビエやきのこが極めて美味しい。フランス語しかわかってくれないので、誰でもわかるチキン、ビーフとか言って手まねでオーダーしたのであるが、今まで食べたことがないような美味しいビーフのステーキが出てきた。ものすごく出てくるのに時間がかかったのであるが、チキンは中に色々つめたローストで、これはオーダーがきてからローストするので時間がかかったのだろうなと思った。自分の作るチキンローストより美味しいと思いました。

というベルギーとEANSの報告でした。

皆さんはまだまだ若いから色々できると思うかもしれませんが、人生は意外と短いので、色々とできることを経験して見てください。そのためにはちょっとの勇気(なかなか初めてのでかいアルファロメオでディーゼル車、オランダ語で説明の書いてあるナビを使いこなすのは大変でした。。。。)と、興味を持つことです。

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