学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
前部長のつぶやき

失敗情報の共有

2015年になってすでに1月たちました。日々の仕事に追われるうちにまとまった仕事も出来ずに時間だけがすぎてゆく気がします。

私がこちらに来させていただいて丁度2年が経ち、3年目に入りましたが、なんとか今年こそは日本医大からのまとまった仕事を始める年にしたいと思っています。

さて、年初から大きな話題となり、非常に残念な結果となったことが中東で起こりました。政治的な思惑や、責任の所在に関して今も大きな議論となっています。

その中で、私が思ったのは、私たちもいつも同じような状況におかれているということです。

自分が信じて進んだ道でも、一歩間違えば、踏み外すし、その結果について思ってもみないことから非難される。自らも、大きな痛みを伴う。

ひとつ今回の事例と違うのは、それが自分に起こることではなく、患者さんにおこることであるということです。

そして私たちはそれを繰り返し繰り返し毎日おこなっていかねばなりません。

そして、今回と同じように、私たちの臨床の中でも、そのような過ちや、事故を未然に防ぐもっとも重要な手だては、十分な、これ以上無い程の情報を収集することです。

イスラムの世界にも医療にも未知のことがたくさんあります。でも何らかの方法で新しい情報を獲得し、それに対応する措置と修正を加えて、本来の目的を達成するようにする。柔軟な心と、しぶとい情報への執着が必要なのだと思います。

何もしなければよい。進まなければ良い。確かにその場は収まるかもしれませんが、患者さんは助からないかもしれないし、医療は前には進まず、安全という見せかけの殻に閉じ込められてしまうのだと思います。

後藤氏はHeroなのか、蛮勇なのか、深い愛の持ち主なのかは、多分本人が最も良く知っているのでしょう。ただし、同じ悲劇を繰り返さない為に、他のジャーナリスト達は、誰かを非難するよりも先に、今後どうすれば良いのかを、論ずるベきだと思うのです。

医療も同じです。失敗は必ず起こります。それを繰り返さないための情報を出すこと。そしてそれを共有することが我々ができる最良の事であると信じています。誤りに対して、個人を責める風潮は、なかなかどの国でも、環境でもなくなりません。従って失敗については語りたくない。恥ずかしい。と思うことが前面にでてしまいます。個人の資質の問題も当然あるわけですが、それが事故や失敗に直結しないようにするのは、システムが重要なのです。起こってしまうということは個だけではなく、個をそこに配置する組織とシステムの問題なのです。その原因を皆で追求し、2度と起こらないようにすること。Negativeではなく前に進むために情報を残し、集積することが極めて重要なのだと思います。

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