学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
教室員活動

国立成育医療研究センターへの小児脳神経外科 国内留学の経験

日本小児神経外科学会認定医取得について、国立成育医療研究センターへの国内留学の経験を元にご報告させて頂きます。

もともと、研修医時代に何科を専攻するか悩んでいた時に最後まで選択肢にあったのが脳神経外科と小児外科でした。最終的には、脳の機能の重要さや未解明な部分が多く、何よりその人の生命・人生に大きく関わる仕事であることに魅力を感じ、脳神経外科を選択しました。脳外科医になってからは激務と責任の重さに忙殺される日々でしたが、どこか小児領域への思いは心の片隅にありました。(単純に子供好きなだけかもしれませんが。)その気持ちとは裏腹に、小児の患者さんを診る機会はほとんどなく、苦手意識が募っていく一方でした。

そんな中、2018年より日本小児神経外科学会が認定医制度を設立しました。当時、日本医大とその関連病院では小児脳神経外科を専門に行っている所がなかったこともあり、自分が小児に興味あることを覚えて下さっていた森田教授より、国立成育医療研究センターへの出向と認定医取得を目指すお話を頂きました。同センターの部長・医長ともに森田教授の東大脳神経外科時代の後輩という縁もあり、2018年4月から2年間、国立成育医療研究センター脳神経外科で勤務させて頂きました。

 国立成育医療研究センターは、前身が国立小児病院であり、国内最大規模の小児・周産期の総合病院です。多くの小児分野でオピニオンリーダーとして位置付けられており、臨床のみならず研究にも注力しており、いずれの面でも国内・海外でも有数の実績を誇ります。その中で脳神経外科は、部長の荻原英樹先生、医長の宇佐美憲一先生、医員の自分、レジデントの4人で一緒に患児達の診療にあたります。荻原先生はアメリカ、宇佐美先生はフランスの小児脳神経外科で働いていたこともあり、二人ともお若いですか非常に経験豊富で、臨床医としても教育者としてもとても尊敬できる、とても人柄の良い先生方でした。

 主な業務は、手術・病棟がメインで、外来や救急対応、学会発表、論文執筆なども行います。患児数が多く、検査入院・手術入院も多いため、病棟業務は正直非常に多忙でしたが、そのおかげで採血、点滴、鎮静、リザーバー穿刺、腰椎穿刺などの小児の処置は数えきれないほどの経験をして身につけることができました。また、何より子供たちはみな本当に天使のようで、笑っていても泣いていても寝ていても、その姿をみるだけで本当に癒され、こちらの方が救われる毎日だったように思います。

認定医の取得のためには手術以外の症例が20例以上必要なのですが、ここでは週に10~20人前後の入院があるため、早期に条件をクリアできてしまいました。緊急対応を要する場合のほとんどは水頭症関係で、周術期管理、合併症、病棟・救外での緊急対応、連日の処置が必要なケースのほとんどは水頭症や髄液に関連したものであり、まさに小児脳外科は水との闘いだなと実感する日々でした。

 手術は年間350件程度あり、疾患としては、1/3が脊髄関係(二分脊椎や脊髄係留症候群)、1/3が水頭症関連、残りの1/3が脳腫瘍、頭蓋縫合早期癒合、機能など多岐に渡ります。赴任してすぐに荻原先生、宇佐美先生の助手としてほとんどの手術に入らせてもらい、間近で小児手術の真髄を学ばせて頂きました。さらに、徐々に執刀もさせて頂き、2年間で約150例の手術を術者として執刀いたしました。認定医の条件が、手術経験10例以上(術者もしくは助手)ということを考えると、かなり多くの手術経験を積ませてもらったと思います。そして、その多数の症例それぞれで治療戦略や周術期管理を学べたことも、自分にとって非常に大きな財産になったと感じています。

また、荻原先生のご指導のもと、脳神経外科学会総会や小児神経外科学会のシンポジウムで発表をさせて頂く機会や、複数の英語論文執筆の機会を与えて頂いたことも、大変ありがたい経験となりました。(これらも認定医の申請に必要な学術単位として使用できます。)

これらの多くの経験・実績を積ませて頂いたおかげで、2020年に申請を行い、無事に小児神経外科学会認定医を取得することができました。これだけ多くの経験をさせて頂いたからには、単純に小児脳神経外科に携わっていくだけではなく、安全で確実なレベルの高い治療の実践と、未来の小児脳神経外科医を育てるための後進への教育にも取り組んでいきたいと考えています。

何よりも、子供達の元気な姿を見ると、そしてその大きな未来の可能性を思うと、とてもやり甲斐のある、欠かせない分野だと確信しています。子供達、親御さんやご家族に寄り添った医療を実践していく所存です。

 最後に、このような貴重な経験を積む機会を与えていただいた森田教授をはじめ応援して下さった医局の先生方、丁寧かつ実践的に多大なご指導を頂いた成育の荻原先生・宇佐美先生や、常に優しかった成育のスタッフの方々、癒しをくれた全ての子供達とご家族に、改めて深く御礼を申し上げます。

石坂栄太郎

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