学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
前部長のつぶやき

広い視野を持って

新年あけましておめでとうございます。新年の挨拶をこの「部長のブログ」で書かせていただくのはこの号が最後となると思いますが、10年間大変お世話になりました。一応村井医局長の時に、医局通信に寄稿を頼まれて以来、何度か医局長には遅筆でご迷惑をおかけしましたが、一度も欠かさず毎月投稿できたのが唯一私が継続できたことかもしれません。

繰り返し好きな桜や料理の話が多くて皆様のお耳汚しになってしまい、また私の独断と偏見と、知識足らずの情報を掲載してしまったこともあったと思います。

さて今回から3回は私がこちらで思ったこと、考えたことを書かせていただきます。

私が日本医大にきて思ったのは、ちょっと皆さんの目が内向きかかなと感じたことです。日本医科大学は4つの付属病院を持ち、かつ多くの派遣病院がありましたから、その施設の人員を満たすことが重要ですので、そのためには仕方ないかなと思う反面、若い先生たちにはぜひ外の環境をみて欲しいと思う。と言うことを何度か書かせていただいたと思います。

元旦の朝、NHKラジオの「著者からの手紙」と言う、本の執筆者にインタビューをする番組で、林真理子さんの「成熟スイッチ」と言う本を紹介する番組をやっていました。自分がいかに学生の頃ひどかったか、高校生から大学生が店員をするバイトに行っても、最年長になってもリーダーを任されることなく、どれだけ自分が責任感なくみられていたか、自分で考えてもいい加減な人間だったと語っていました。本の表紙はその頃の自分の写真と、今の彼女の写真の比較となっています。その後の彼女は書くことに集中し、成長に焦り、野心的に有名になりたがり、叩かれ、そして何名もの憧れた先輩にさまざまな意見を聴きながら、成長してきた。と。

ご存知のように彼女は今 “問題の”日本大学の理事長を務めている。自分がここまで成長(成熟)してきたのは、自分がいつも違うことを経験し、それに立ち向かう意欲(野心)を持って生きてきた。とのこと。

もともと、何がきっかけでこの本を書いたかと導入で紹介されていたのは、現役時代に非常に重要な役職をしていたような人が、年齢をとって役職が亡くなった時に、「自分は偉いんだ」「なんで言うことを聞かない」「自分の思うように周りが動かない」ことで、いつもぶつぶつ怒り出す。レストランなんかでも、威張って、怒ってばかりいるような、いつもイライラしている老人を見かけると言う。それこそうまく成熟できなかった証拠。瀬戸内寂聴さんのように、あるがままの世界を受け入れる成熟を目指して欲しいと言うのがこの本のきっかけらしいです。

そのための4つのスイッチを自分の経験も含めながら語っています。ちょっとだけ紹介します。(興味のある人は「野心のすすめ」とセットで読まれては?)

  1. 人間関係の心得

Episodes: 

  1. いざと言うときに自分のために喜んで力を貸してくれる人がいるか。人間関係は成熟にとって、最大の財産。
  2. 世話になったら(何かをしてもらった時やご馳走になった時)、必ず自筆の礼状を書いていた。
  3. 信頼を得るためには、ちょっとした手土産(地元のものとか、、)を持ってゆく。
  4. 「編集者とばかり(同じ業界の者)つき合ってると、ロクな作家にならないぞ」と言われた
  5. 人は年をとり、人づき合いの新陳代謝を繰り返していくうちに、人間関係に悩まなくなる。
  1. 世間を渡る方法

Episodes:

  1. 感謝の流儀を身につける。お返しは自分のテリトリーから(地元とか趣味とか、個人関連で)。
  2. 支払うのは誰かに敏感になれ。どんなワインを選ぶかで品性がわかる。
  3. スピーチはなるべく短く。つかみは忘れず。
  4. 時間(切り替え)を制しなさい。
  5. 自分を嫌いな人と話をして、自分の何が嫌いなのかを知る。
  1. 面白がって生きる

Episodes:

  1. お金を味方につけ、有効に使う(人生を積極的に生き・楽しむために)
  2. お金で本物を知る。
  3. キャバ越えで仕事を面白くする。

「素直さ」、「真面目さ」、と「意地」の3本柱を持って生きる。

  1. 人生を俯瞰する

Episodes:

  1. 運は、俯瞰してみる。悪運だ、運が悪いと思っていても、それは次の幸運への準備かもしれないし、最終的に楽しい人生を生きていれば その分得したと思えば良い。
  2. いい運と悪い運は最終的にはプラマイゼロになる。

私も最近世界脳神経外科学会のことで、本当に変な人(達)と付き合わねばならず(これは海外の先生に言わないで欲しいデス)、本当に生きてきた(育った)世界が異なると、考え方がこんなに違うということを今更ながら思い知っています。Mayoの時も、サウジ出身のDr(王位継承権第30位くらいの王子くらいでした)と同じ時期にchief residentをして酷――い目にあったのですが、忘れてました。本学会での電話やweb会議の後(通常真夜中です)、私が”怒り”をぶつぶつこぼしていると妻がいつも「早く辞めたら、、」と言ってくれます。でもこの尋常ではない・苦味・も多分将来(あまり長くないですが)自分の人生の肥やしにできるのではないかともどこかで考えている自分がいます。「怒りの閾値」を上げてくれているかなとも思っていますし、人には色々な物事の捉え方があることを知ります。

また自分は様々な施設で研修をして、海外でもウロウロしていましたので、本当に多くの人たちと出会い、心を動かされた人たちも、嫌な人だなと思った人もたくさいいます。米国人に関して言えば、名の通った、chairmanとか、尊敬されているpositionにある人たちほど、すごく良い人で、優しく、東洋人の私にも理解があり、Sincereという言葉が当てはまる人が多いですが、若手のDr.にはそうでない人もたくさんいます。自分もその途中なのかなと時々思います。先生達もぜひ色々な人たちと出会って、自分の心を耕してください。

私も、あと10年後には自分でも成熟したなと思いたいです。

さて、私もその番組を見ていたのですが、上記の本で紹介された「チコちゃんに叱られる(NHK)」でのチコちゃんの質問があります。

「年を取ると一年あっという間に過ぎてしまうのは?何故?」:

「人生にトキメキがなくなったから。」と言うのが答えでした。

若手の先生達の一年はまだまだ長いと思います。私など、あれこれしたいと考えているだけで年が過ぎてしまいます。どれだけ毎日ときめいてますか?

林さんは日大の理事長になって、毎日毎日がとても長いそうです。

私も今年の4月からは、違う人生になるのかと思いますが、刺激的に活動して長く感じる日々を生きたいと思います。ただだらだらを時間を過ごさないように。

皆さんも、ぜひ、色々なことに興味を持って、楽しんで、色々な人や事象や、経験に出会って、広い視野を持って進んでください。

良い一年にいたしましょう。

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