2019. 03. 04
第42回日本脳神経CI(Computer imaging)学会(CI2019)を開催して
先日 3/1-2の2日間で第42回日本脳神経CI学会を開催させていただきました。377名の参加を得て無事終了いたしました。本学会の開催にあたり、教室員、OBおよび関連施設、関連企業から多大なご協力・ご支援をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
この学会は日本にCTが導入された1970年代に東大佐野圭司教授と現在本学会の事務局長をお務めになられている松井孝嘉先生が創始されたCT研究会を基とし、CTの知見の共有、その活用方法の検証を行い、さらにMRIの導入、コンピューターイメージングの導入を機会にComputed imaging(CI)学会として発展してきました。すでに40年以上の歴史があります。
今回はテーマを「コンピューターにできること。人のすべきこと。」とさせていただき、日本のITの中心とも言える六本木ヒルズ49Fの学会場(六本木アカデミーヒルズ)で開催させていただきました。
もちろんそのテーマの根底はAIを意識したものです。
このブログでもAIのことを、これまで何度か記載してきましたが、その開発のスピードはますます加速し、本当に実現一歩手前または実現しているものもあります。
今回1日目はそのAIの診断や医療応用への現状と限界を示していただき、また現時点での様々な放射線技術、コンピューターのイメージ・医療応用の現状とUp dateを目指しました。さらに今回のCI学会では教育にも力を入れ教育セミナーを2日間28人の講師に一人30分の持ち時間で、神経・解剖/小児/腫瘍/血管障害のテーマについてじっくりと講義をしていただきました。
さてAIについては、多くの先生に様々なご講演をいただき、非常に充実したものでした。その中で、みなさんがご存知のようにAIの知能を確立してゆく上で、教師として我々が深く介入し、多くの教師データと解釈方法を与えるものと、一方でAI自体に大量のデータを与え、AI自体が自動的に深く学習してゆくタイプ、またそれらのハイブリッドがあることが知られています、私の浅い知識では特に後者では、AIの判断基準がブラックボックであり、人間はその回答を鵜呑みにするしか無くなってしまう可能性があることを危惧しておりました。今回の講演の中の情報をまだ全ては消化し切れていないのですが、人間の代わりに何十万件という文献を一瞬にして読んで、見落とされていた治療法を引き上げ、その患者・遺伝子・病歴に最適の治療を教えてくれるWatsonの活用、さらに電子カルテを読み取り、その内容から再入院しそうな統合失調症の患者を予測する試みなど、うまく人間が活用できるシステムになりつつあることを知りました。また脳動脈瘤の自動診断機を作っている東大の林先生からは、AIをArtifical intelligenceではなくAugmented intelligenceとして、その与えてくれる我々が予期もしない情報や知見を含め、それを包括して我々の医療形態・判断形態が変革して行かねばならないのではないか。AIに支配されるのではなく、AIをうまく活用して、我々人間がさらに進歩しなければならない時代が来ると思いました。
また私共が東京大学工学部、医学部、名古屋、東北大学と継続してきたImPACTプロジェクト「バイオニックヒューマノイドが拓く新産業革命」の研究総括をさせていただきました。工学部や他・多領域と連携をするためには、自由なDiscussionの環境と本当の意味で相互の知識を理解し合うことが重要であることをお話しいたしました。
さて本学会の目的である新しい放射線画像の知見では、脳動脈瘤の脆弱部の検出に役立つ可能性のある動脈壁imagingの現状から始まり、髄液流の画像化、Glymphatic systemの意義、Diffusion Kurtosis Imagingの活用、Autopsy imagingの基礎と活用、超音波や末梢神経imaging(MR Neurography)の現状と可能性などをじっくりお話ししていただきました。明日からの臨床に役立つ知識が満載でした。
残念ながら企画した私は教育セミナーを聞くことはできませんでしたが、そちらも知識の整理と刷新に非常に役に立つと好評でした。
あいにく前日と1日目は雨模様で、特に前日に使用させてもらった51Fのレストランの外は真っ白で全く夜景は見えずという状況でした。しかしその後天候も徐々に回復し1日目午後、2日目には遠くを見渡せ、また1日目の夕方開催しました懇親会では、東京タワー目の前の大都会の夜景を見ながら、画像クイズを出しものとして、ひと時を楽しんでいただきました。ちなみに日医の学生さんがクイズの6題目を正解し景品のスペインビール・イネディットを獲得しました。
新しい知見と、明日使えるとても重要な情報を十分学べる良い学会が開催できたと思います。
最後に本学会の事務局として努力してくれた田原重志医長、毎日遅くまでのこって事務作業、連絡を補助してくれた相澤朋美秘書、コンベックスの上杉さん、ITや印刷を補助してくれたモスアソシエイトの岡田さんに深く感謝いたします。