学校法人日本医科大学
日本医科大学 脳神経外科学教室 Nippon Medical School Department of Neurological Surgery
前部長のつぶやき

変化と安定

暑い日が続きます。如何おすごしでしょう。

さて今回は当たり前とも言えますが、日頃ふとに想うことを書いてみます。

人間はだれでもある一定の状況に落ち着くと安定したいと思います。私もこのまま大学病院や教室が安定し、さらに発展するとよいと思っています。

安定はどうすればできるのでしょうか?

人や生物はなぜ何十年(日本人女性は86年!)生き生きとしているのでしょう?

一方で建物(特に日本の)はどうしてだんだん古くみすぼらしくなってくるのでしょうか?

社会も建物と同じで、大きな栄えた国が、最後は朽ちて滅ぼされてゆくということを歴史が語っています。

話しはすこしずれますが、日本女性の一生に子供を生む頻度(合計特殊出生率というそうです)は一人あたり1.4とのこと。これは社会がとてつもない危機に面していると言えます。日本の人口はなにか大きな変化がおきないといずれ江戸時代(3000万人)くらいになるそうです。ちなみにお隣の韓国は1.2で超低出産国とのこと。経済と関係あるかというと、そうでもなく、添付図のように開発途上国はすべてたくさんの人数がうまれています。先進国のなかでは米国とフランスが2を超えて安定子孫出生率だそうです。要はそういう国は社会がSustainableで100年後のことを語れるということです。何が米国やフランスと日本の違いでしょうか?人口が安定し社会が将来を見通せるためには、結婚や子供、仕事、人生のありかたを含めて、女性の出産環境をうまくつくっていかないといけないのです。これにはどのような変化が必要なのでしょうか?

人間は日ごと細胞が入れ替わっています。便の大部分は腸の上皮ですし、血液も皮膚も数日〜数週で置き換わっています。

だから生き物は生き生きしているわけで、建ててしまってそのままの建物は古く朽ちてゆきます。特に日本人の作る建物は100年先を見越して立てているものは極めてすくなく、手入れをして古家にすむよりも新築にすみたがる人たちです。建物がふるくなればさらに良い建物になるようにケアをしません。お茶の茶碗や刃物などの道具は逆だったように思うのですが、最近はめっきりディスポばやりです。自転車なんて最たるものかもしれません。修理してくれる自転車屋さん減りました。一方で古い者をビンテージといっていますが、これはむすろファッション的なものの言い方で機能からいうとぼろみたいなものです。

先日パリに寄りましたが、街はすこしくすんではいるのですが、古い建物に新しい工夫をしてとてもうまく生活をしています。20年もすると見る影も亡くなるくらい風景の変わる日本の都市とは全く違います。建物を良く保つのは日々のケア(毎日新しく建てるくらい昨日よりもきれいになるくらい掃除したり、磨いたりする)が必要なのかと思います。この変化の仕方ひとつでも日本とフランスの違いがでており、多分社会が子をたくさん作る環境の相違もこのような違いのなかにあるのかもしれません。

医療の社会も同じなのでしょう。昨日と同じことを今日していたら、多分1年後には衰退しているでしょう。これまでの伝統やしきたり、経験の蓄積も重要なのですが、これまでのことをしっかりと見つめ直してすこしでも良い方法にする。臨床や研究のシステムをすこしでも良いものにする。それを日々心がけていかないと多分100年後の脳神経外科はないでしょう。

周りがどんどん変化しているわけですから、安定するためには自分たちも常に変化していないといけないわけです。脳動脈瘤クリッピングを10年前と同じにできるのではとても血管内治療の進歩には太刀打ちできません。(どちらがよいとか言いたい訳ではありません)今明らかに血管内は学会も会員も人気があり栄えています。それは多分進歩(変化)を感じることが出来るからと思います。脳神経外科はS40~50年代に外科の中でも非常に人気を集めました。それは新しい革新がいつもあったからと思います。

米国のJCI(Joint commission international医療機能評価の国際版)では日常診療にマニュアル(決まり)があることが大事なのですが、それよりも重用視されているのは、そのマニュアルをどう用いて、どこに問題があり、どう訂正したか?なのです。

変化をシステムの中にうまく組み込み、それを力とすること。

日本は鎖国が長く続き、変化をさけてきた人種で、その中で独自の文化がうまれましたが、やはりこのような変化の激しい世界の中で日本が生き残ってゆくためには考え方に 変化を好む志向をすこし取り入れていかないといけないのだと思います。

脳神経外科のなかも同様で、いつまでも生き生きとした医療を安定して続けるためには 変化を味方にする必要があるのだと思います。

今後私どもも、ぜひうまく変化を取り入れていきたいと思っています。伝統と変化をいつもうまく融合できればと思います。

ご意見のある先生方ぜひ何でもいってきてください。

国別 合計特殊出生率 2.2以上くらいで数が安定するそうです。

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