2014. 02. 01
手術記載描画のすすめ
みなさんは手術記載に絵を描かれていますか?日本医大にきて、手術後カンファランスやビデオ呈示をみても、カルテにもあまりしっかりと描画されている記載をみません。できれば手術ビデオにも自分の手術絵などを入れるとよいと思っています。皆様各自のノートに残しているのであれば問題ありません。できればカルテにも残しましょう。
米国でも実は手術記載に絵を描く先生はまれで、知っているのはSekhar先生くらいです。(おせいじにも上手いとはいえませんが、黄色のラインマーカーで神経、赤で血管を描いてました!)MayoではDictationといって電話やテープレコーダーで手術をナレーションで話すと、当日カルテにタイプされた手術記載が入っています。(私の場合、あまりにも発音が悪く、自分でタイプした方が早かったです)ですので、絵は描かないのが大部分でした。今の電子カルテの現状に似ています。
現在はマルチモダリティーの時代であり、ビデオがあり、MRI, CTや3次元シュミレーションがあり、モニタリングデータあり、それらを含めれば良いではないかいう意見もあると思います。それもすべきです(残念ながらそれもされていません)。その上で自分が何をしようとしていたのかを1枚または数枚の絵で示すのがよいと思うのです。下手でもかまわないと思います。
手術記載の絵に関して、最も印象的だったのは信州(その後名古屋)の教授だった杉田虔一郎先生を訪れた時の事です。1987年頃だったでしょうか?私が富士脳研で研修医をしている頃 その頃同院の部長だった瀬川先生に勧められて杉田先生の教室を一週間見学しました。そのとき杉田先生の教授室でお話させてもらい、先生の有名な手術記載を描くアトリエのような教授室を拝見しました。最初のころのややどんくさい(?失礼)絵から、その当時の教科書になったすばらしい絵まで、その描くコンセプトをお聞きしました。鉛筆は駄目!描画はペン一筆で、、、とかでした。そのころ既に自室でビデオを見れるようになっており、STAEDTLERの色絵の具を薄めて使うことも教わりました(一時まねしてみましたが、今そのようにできてはいません)。
その後米国で恩師のSundt先生のOfficeに亡くなった杉田先生からもらったという手術絵がマットされて飾られていたのを覚えています。手術絵が芸術となっている場面でした。
杉田先生は(私もですが)手術はあまりきれいではありませんでした。でも記載にかかれた絵はコンセプトがよくわかるもので、何をしようとしていたのか?何をしたのか?その絵に残されています。
米国(欧米)では科学をアートといいます。医学も同様です。
アートはサイエンスを生かすために重要な要素なのです。医学の進歩も同じと思います。
電子カルテの時代には取り込みなどめんどうですし、絵を入れることは少ないように思います。でも自分がその場でみてきたこと、自分がその場で何をしていたのか?何を考えたのかを残すことは極めて重要です。写真もいれるのも良いですが、自分の手でコンセプトを記入するのも重要です。
幸い同門には馬場先生という手術の絵の極めて上手な先生もおります。
Cushing先生の現在よくでてくる写真には手術後に絵をスケッチしている写真がよくでてきます。ご存知のように彼の手術のコンセプトは今も生きています。
私が思う(自分でもまだ出来ていませんが)手術記載の絵のあり方は以下です。
1)手術前に予想画を描いておく。特に若い先生の術場での解剖認識力はそのようなトレーニングから生まれると思います。今自分は実際に術前描画していませんが、イメージ上では、こんな手術というのをあらかじめ予想しています。
2)手術描画はただのスケッチと言うよりも、術者の眼からみえた画像というより、コンセプトのようなものを描くのが(描ければ)よいと思います。例えば脳幹の手術なら表面よりも中で何をしているのか?とか 断面図とか。
3)自分が術者でなくても、その日の手術を振り返って、描画してみる。その上で、術者の描いたものとどこが違うのかを比べる。
4)下手でもかまいません。まず始める事が重要です。
手術描画は手術のサイエンスでありアートです。ぜひ活用しましょう。