2013. 09. 01
日米レジデント事情
日米レジデント事情:
皆様、竜巻やら豪雨やら、不穏な天候が続いていますがいかがお過ごしでしょう。夏は少し休まれることはできましたでしょうか?
私は米国ワシントン州にいき、2つの国立公園(Mt. RainierとOlympic)とBritish Columbiaにほど近いSan Juan Islandというところにいきかなり骨休みをいたしました。また恩師のSekhar先生のお招きもありワシントン大学に2度目になりますが、訪れることができました。
ワシントン大学脳神経外科のレジデントと小一時間 両国の脳神経外科研修の違いを論ずることができました。
その肝は1)米国ではたくさんの症例を経験することができる。2)最後の1年はイギリス(またはニュージーランド)にいって、好き勝手(?)に自分の腕を試す機会がある。3)ほとんどのレジデントは終了後どこかのfellowshipに加わり2年ほどさらに専門性を磨く訓練をする。ということでした。うらやましくもあり、一方で実は考えることをしない脳外科医になっているのではないかなともおもいました。というのは症例は流れになっていて、治療の判断にはレジデントは関わりません。きっとそのままを将来も自分の症例の判断の根拠として進めていくのでしょう。
前頭側頭開頭はほとんどすべて(中大脳動脈瘤も!)Orbitozygomatic osteotomyをしています。一例一例の特殊性を判別したり、細かく検討したりすることはほぼありません。診断名=治療方針(手術法)みたいな公式ができあがっているのです。
一方で日本では、1つの施設で経験する症例はずっと少ないです。でもそれ故に、いろいろなことを考えます。動脈瘤の3次元モデル、昨日立山先生が話していたような特殊な画像評価方法の検討、村井先生のバイパスの血流検証、山口先生の様々なモダリティーを用いた腫瘍の手術など、その良い例です。
それに専修医の意見が入るかというと、そうでもありませんが、かれらは、「考える」ということの重要さを認識するでしょう。すなわち日本には4)症例毎に深く検証する という特色があります。
一方米国の医学研修では80時間ルール(週80時間以上働いてはいけない、その場合、管理者が罰せられる)という大きな制度上の問題があり、症例ケアの連続性、責任感の育成の欠如という障害が発生している。その上その時間制限は48時間になるという話しさえ上がっている。日本ではまだそのような制度は確定していないが、導入の噂もあります。
さて今の日本の医療制度では1)は無理としても、できれば米国流と日本流をうまく取り合わせた脳神経外科訓練・研修システムができるとよいと思います。仕事量に関してはやはり症例をきちっと診るという責任感の育成は、医師の教育ではもっとも重要な課題であり、それを損なわず、かつ過労はさけられるシステム作りが必要と思います。また自分の責任で手術を行うという、背中に汗を書きながら苦労する(だけどこのご時世、必ずcatastropheにならないうちに補助をする)といったうまい手術教育のあり方も作っていかねばならないと思います。日本医大の研修プログラムの中でうまく役割を配置し、また目を世界に広げて、カンボジアや中国、ヨーロッパとかにも研修関連施設ができるとよいと思います。いろいろな可能性を積極的に探求して、「前へ」 進みましょう。(2013年9月 森田)