臨床について

clinic

現在、付属4病院に診療科を持ち、150の病床と年間1,000例余の手術を行い、さらにプログラム全体で3,000例超の手術を行なっています。大学病院脳神経外科としては国内屈指の規模を誇っています。付属4病院における均質な診療を目的として、各々の疾患に対する統一した治療方針のもと、共通のプロトコルに従って治療を行っています。そのため毎週火曜日には合同臨床カンファレンスを行い、各病院における一週間の手術症例を中心にビデオを用いて活発なディスカッションを行っています。





『脳動脈瘤の治療法選択について』

脳動脈瘤脳動脈瘤とは、脳血管の壁の一部が風船のように膨れてできる壁が薄い部分のことで、破裂するとくも膜下出血の原因となるものです。  くも膜下出血の予後は脳血管内治療が増えたり、いろいろな薬が増えても2024年現在、30年前とほとんど予後が改善しておらず、半分から3分の1の人が重症になる病気です。このため、未破裂の内に発見された脳動脈瘤の中でよく選別して必要なものに、破裂予防の治療をしようとするのが、未破裂脳動脈瘤の治療です。破裂を明確に予防できる薬はなく、禁煙や高血圧の管理が必要なのはわかっていますが、根本的な対策にはなりません。

脳動脈瘤の治療には、大きく分けて開頭クリッピング術とコイル塞栓術という2つの方法があり、それぞれに長所短所があります。日本全国の脳卒中専門家が作成した脳卒中ガイドラインには2023年の段階で、記載されていることは、次のようなことのみで、それ以外のことについてはほぼ、個人の意見でしかありません。

1) 破裂を明確に予防できる薬はなく、禁煙や高血圧管理を推奨

2) 治療方法選択は、開頭手術、血管内治療の両方の経験豊富なチームが必要

3) 血管内治療では、開頭手術に比較し治療後の不完全閉塞や再発の頻度が高い

これらの情報からわかるのは、開頭クリッピング術は根治性が高く、再発が少ない治療であることです。合併症のリスクとその頻度、すなわち治療の安全性に関しては、治療法別に明確な違いはないと考えた方が良いでしょう。開頭手術、血管内治療ともに、それぞれでのみ発生する合併症があるからです。また、どちらかの治療法が明らかに向いている動脈瘤があります。開頭手術では治療しやすいが、血管内治療では難しい動脈瘤も、その逆の動脈瘤もあります。